こんばんは。
形成外科専門医の王子富登です。
本日は外来と局所麻酔の手術3件でした。
日曜以外は毎日手術をしております。
12月は手術の需要が高いので、他の月よりも一層手術が多いです。
常に最高の結果をだせるように体調管理もしっかりします。
前回の続きです。
他院眼科で手術を受けたが、まぶたが開かなかった患者さんです。
眼科で三回手術を受け(詳細不明)、
その後当院形成外科に紹介されました。
挙筋機能(まぶたの筋力)はほぼない状態でしたので、
迷わずに前頭筋つりあげ術一択です。
前頭筋つりあげ術とは、
まぶたをあけるメインの筋肉(眼瞼挙筋)の力がない方に対して、
まぶたとおでこの皮膚を、筋膜もしくは人工素材でつなげることで、
眉毛を挙げた際にまぶたが開くようにする手術です。
これもまた素晴らしい手術なのですが、
繊細な技術が必要とされます。
では今回の症例を解説していきましょう。
デザインの写真です。少し変わったデザインとしています。
前回の手術痕を切除することとし、
二重の幅は少しでるかでないかの末広型くらいを狙い、
まぶたが上がった際に皮膚の余剰はほぼないと予想して
デザインしました。
術中です。
皮膚の下にトンネルを作成する直前の写真です。
眼窩隔膜の下にトンネルを正確に作成します。
出血しないように注意が必要です。
次に大腿筋膜(ふとももの筋肉の膜)を加工して移植します。
この作業もまたこの手術の楽しみでもあります。
Y字型にしたり、三股にしたり、四股にしたり、三本にわけたり、
様々なやりかたがありますが、
結果がすべてでしょう。
このY字型の部分を瞼板(まぶたの板)に縫い付けるのですが、
これによってまぶたのアーチが決まります。
ここは一番重要な作業ですから、妥協することなく調整します。
(詳細は以前の記事を参考にしてください。)
その後、筋膜を眉毛側のきずからだして、
まぶたの開け具合を調整します。
これが二番目に大切な作業です。
縫い方と調整の仕方は私のオリジナルで、
細かな調整がしやすい方法です。
術直後の写真です。
バランスやアーチ、二重の幅等、なかなかいい具合に決まっています。
なるべく腫れない操作を心がけて、調整に有利になるようにしています。
時間がかかると、腫れが強まるので、正確かつ早い手技が必要です。
閉瞼(まぶたをとじたところ)の写真です。
このように少し半目になります。
この程度であれば術後閉じることができるようになります。
まぶたの開きと閉じにくさを左右あわせるように調整しています。
上方視(上をみたとき)の写真です。
術直後から上が見やすくなり、多くの患者さんは感動されます。
ただし、注意事項がひとつ。
大腿筋膜(側頭筋膜)は術後の経過で縮むことがあり、
それは0-20%程度の縮みといわれています。
これは予想ができませんが、丁寧かつ正確な操作が縮みを抑えるといわれています。
筋膜が縮みすぎたことによる過矯正(まぶたが開きすぎること)だけは
絶対に避けなければなりません。
写真の使用をご快諾していただき、ありがとうございます。
果たしてどの程度筋膜が縮むのか、
それによってどの程度まぶたが開いてくるのか、
次回は術後の経過を詳しく載せます。