形成外科専門医の王子です。
本日は城本クリニック立川院で勤務です。
台風です。
花火がのきなみ中止になりそうですね。
楽しみにしていたかたにとっては残念ですが、
天災にはかないません。
そして私は帰れるか心配です。
本日は埋没法の経過と副作用についてです。
埋没法の経過は?
ダウンタイム気になりますよね。
埋没法を受けたかたの一般的な経過です。
埋没法後から3日目くらいまで
泣き腫らしたような腫れで、
かなり幅が広くみえます。びっくりするかたもちらほら。
心配なかたは仕事や学校は2-3日休むとよいでしょう。
埋没法後、1週間くらい
大まかな腫れがおさまりますが、
朝はけっこう浮腫んでいたりと、やや二重の幅が広くみえます。
メガネをかけなくても不自然さはなくなってくるころです。
問題なく社会復帰できますよ。
手術中に内出血があったかたは、少しだけ黄色味が残っていることがありますが、
メイクでごまかせる範囲内です。
埋没法後1か月
完成です。腫れがおさまり、安定します。
ブジーシミュレーションで作った幅に似た二重幅に落ち着きます。
この時点で大きな左右差があれば修正することもあります。
そしてやりかた次第でダウンタイムは短くなります。
腫れの期間に影響する要素を挙げますね。
- 麻酔の量
- 手術にかかる時間
- 使う糸の種類
- 糸の本数
- 糸の通し方
- 糸をむすぶ強さ
- 患者さんのリラックス度
- 患者さんのまぶたの状態
- 患者さんの術後の過ごし方
といったところです。
各項目に触れていきましょう。
- 麻酔の量 → 麻酔が少なければ、2日目くらいまでの腫れが少なくすみますが、麻酔が少なすぎて痛いのはしんどいです。経験に基づく、ちょうどよい量があります。
- 手術にかかる時間 → 15分〜30分でおわります。すぐにさっと終われば腫れも少ないです。
- 使う糸の種類 → 細い糸や細い針を使うことが大切です。糸によって値段を上げるクリニックも多いです。
- 糸の本数 → 多ければ多いほど腫れます。少なければ少ないほど腫れは少ない傾向ですが、糸が少ないと外側や内側のラインがゆるくなったりします。
- 糸の通し方 → 複雑な通しかた、雑な通し方だと腫れが大きくなります。一番腫れにくいのは点どめといわれる方法です。逆に1本の糸針を何度も往復させるような方法では腫れが引くにくい印象です。
- 糸をむすぶ強さ → 糸を強く結べば結ぶほど腫れが大きくなります。糸をゆるめに結べば腫れが少なくなります。強すぎてもゆるすぎてもいけないので、力の加減が重要です。
- 患者さんの緊張度 → 緊張していると、まぶたにチカラが入り、内出血しやすくなります。内出血があると腫れも長引きます。なるべくリラックスしてください。緊張をやわらげてあげるのも医師に必要なテクニックですね。もちろん、医師が緊張しているのは論外です。
- 患者さんのまぶたの状態 → まぶたの組織が薄くて脆い方はやや内出血しやすいです。また、アイプチかぶれがあったりと、まぶたに炎症がある場合も内出血しやすいので要注意です。アイプチかぶれしやすいかたは、手術前2週間くらいはアイプチを使用しないほうが無難です。
- 患者さんの術後の過ごし方 → 手術翌日まではなるべく安静に冷やしていたほうが腫れがすくなくすみます。手術後すぐに、運動したり、お酒を飲んだり、力んだり、泣いたりすると腫れが大きくなります。
下3つは患者さんが気をつけることですが、上の6つは医師の技術によるところが大きいです。
よい医師に出会えるといいですね。
埋没法の副作用(合併症)
広告ガイドラインが厳しいので、
いまいちど、副作用(合併症)を解説しようと思います。
プチ整形といわれる埋没法でも
副作用(合併症)はいくつかあります。
時期別にわけてみてみましょう。
早期(手術当日〜術後7日くらい)
- 内出血
- 腫れ
- 眼瞼下垂
中期(手術後1か月程度)
- 糸のトラブル(糸がぽこつく、糸が透けてみえる、糸にばい菌がつく、糸がとびでる、糸が目ん玉側にでるetc)
- シスト
- まぶたの異物感、ゴロゴロ感
- 眼瞼下垂
- ラインの左右差
- 希望通りにならなかった
- 見た目の変化が受け入れられない
後期(手術後3か月以降〜)
- 二重幅が思ったより狭い
- ラインが消える、薄くなる
- 糸のトラブル
- 霰粒腫(さんりゅうしゅ)
- 眼瞼痙攣
- 埋まっている糸への不安感
しつこいようですが各項目を説明していきます。
早期(手術当日〜術後7日くらい)
- 内出血 → 針やメスを使うので、内出血が起こり得ます。車を運転していれば、交通事故にあう可能性があるのと同じです。稀に下まぶたに及ぶくらいの大きな内出血をすることがあります。少しでも内出血のリスクを低くするためにいろんなテクニックがあります。
- 腫れ → プチ整形といえども腫れます。腫れないはウソです。限りなく腫れを少なくするためには前半で書いた要素が大切になってきます。
- 眼瞼下垂 → 腫れや内出血がひどい場合は一時的に眼瞼下垂となります。
中期(手術後1か月程度)
- 糸のトラブル
糸がぽこつく → 糸が皮膚にひっかかっていて結び目の埋まりが弱かったり、糸をむすぶ強さがゆるすぎたり、皮膚が薄い場合にお起こり得ます。糸がぽこついている場合、状態によっては糸をかけなおしたほうがよいです。
糸が透けてみえる → 皮膚が薄い場合に起こる可能性がありますが、経過とともによくなります。
糸にばい菌がつく → いわゆる化膿、感染といったものです。赤くプツッとなります。自然によくなる場合もありますが、基本的には糸を抜いたほうがよいです。この場合、同じ日に糸をかけなおすのはおすすめしません。
糸がとびでる → 糸が皮膚にひっかかっていたり、糸をむすぶ強さがゆるすぎたりする場合に起こります。ほっておくと、ばい菌がつきますので糸を抜いてかけ直す必要があります。
糸が目ん玉側(結膜側)にでる → 糸がゆるすぎたり、糸がほどけたりすると起こり得ます。目玉の表面は敏感なので、違和感や異物感、痛みがでてきます。ほっておくと、目ん玉が傷つきますので、早急な抜糸が必要です。 - シスト → 糸が皮膚にひっかかっていて結び目の埋まりが弱かったり、皮膚の成分が一部まぶたに入ってしまった場合に起こり得ます。小さい切開から切除します。
- まぶたの異物感、ゴロゴロ感 → 糸が結膜側に出ている場合や、瞼板法で糸を強くしばった場合に瞼板が変形して起こり得ます。前者は抜糸、後者はまず経過をみて、それでも治らないようなら抜糸を検討しましょう。
- 眼瞼下垂 → 1か月たってもまぶたの開きが悪い場合には要注意です。主に挙筋法で糸を強く縛りすぎた場合に起こり得ます。抜糸が必須です。挙筋法は結ぶ強さが重要です。
- ラインの左右差 → 芸能人でも二重幅に1mmくらいの左右差はあります。二重幅の左右差が2mmを超えるようなら修正をしましょう。2mm未満の左右差であれば、ご本人の利き目や眉毛を上げる癖の影響もあるので、左右差を受け入れた方が精神衛生上よいと考えています。
- 希望通りの二重にならなかった → カウンセリング不足が主な原因です。自分の希望をしっかりと伝えましょう。それでも希望から離れているようであれば、やり直しを検討します。
- 見た目の変化が受け入れられない → 意外と多いです。もとのまぶたに戻りたいとおっしゃるかた。こればかりは説得しようがありませんので、抜糸をします。
後期(手術後3か月以降〜)
- 二重幅が思ったより狭い → 1週間後、1か月後、3か月後と、だんだんと二重幅が狭くなってきます。そしてだんだんと欲がでてくる時期です。幅を広げたい場合はもう一度埋没法を行います。(無理な幅はやめたほうがよいです。)
- ラインが消える、薄くなる → これは埋没法の欠点でも利点でもあるところです。埋没法は仮縫いに近いので、ラインはいずれ薄くなります。ラインが消えてしまう人もいます。かけ直しが必要です。ただし、埋没法を3回くらい受けたかた、半年以内にかなり薄くなってしまうかたは、切開法に切り替えた法が無難です。
- 糸のトラブル → 先ほど述べた通りです。これは糸が埋まっている限り、いつまでも起こり得ます。
- 霰粒腫(さんりゅうしゅ) → 主に瞼板法で起こる可能性があります。瞼板にあるマイボーム腺というあぶらの腺を糸や針できずつけてしまった場合に、瞼板の結膜側にできます。まぶたがごろごろします。小さい切開から内容物をかきだす処置が必要です。
- 眼瞼痙攣 → 最近のトピックです。挙筋法や切らない眼瞼下垂において、埋没糸がミュラー筋にダメージを与えた場合に起こる可能性があるといわれています。原因はよくわかっていません。私個人的には埋没法と眼瞼痙攣の直接的な因果関係はないと考えていますが、実際に困っている人をたまにお見かけするので無視はできません。本物の眼瞼痙攣であれば糸をとっても治らない場合もあります。専門医にご相談ください。
- 埋まっている糸への不安感 → 埋没糸はナイロン糸で、吸収されません。異物です。ナイロン糸が体の中に残っていても問題ありませんが、異物が体のなかに埋まっていることがとても気になってしまうかたがいらっしゃいます。その場合、抜糸をしましょう。
こういった具合です。
意外と多い埋没法の副作用。
初回や複数回目にかかわらず、埋没法を受けようと思ってるみなさん。
知識をつけて、心してのぞみましょう。