王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重と逆さまつげと

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂と逆さまつげなどの治療について紹介していきます。

逆さまつげの手術治療 睫毛内反が再発しないコツ 注)手術中の写真あり

形成外科の王子です。

 

 

前回のブログでご紹介したかたの下逆さまつげの治療です

 

今日は逆さまつげのお話です。

日本人は一重の方が多く、下まぶたも厚ぼったくて一重っぽい方が多いので、

逆さまつげに悩むかたはけっこういます。

 

逆さまつげは成長とともに改善することもあるので、

まつげが眼球に触れていなければ経過観察です。

しかしまつげが眼球に触れていて、角膜にきずがついたり、

よく目をこすったりしてしまうようであれば手術が必要です。

 

しかし、逆さまつげの治療で問題になるのは

「後戻り」

です。

 

医学的には

「再発」

です。

大学病院で働いているころから、逆さまつげの再発例の治療はよくありました。

他の病院の眼科や形成外科で逆さまつげの手術をしたけど、

すぐに戻りましたって感じのかたたちです。

想像以上に再発は多いです。

 

お子さんが頑張って全身麻酔で手術をうけたのに

逆さまつげが元に戻ってしまったら、

さすがにかわいそうですよね。

 

いままでご相談に来たかたのなかでお気の毒だったのは、

「逆さまつげの手術だけだと再発します。

目頭切開も同時にしないと逆さまつげが治りません。」

といわれて、逆さまつげと目頭切開を受けるも、

逆さまつげは再発したあげく、目頭もさらに丸くなってしまったかたでした。

間違った知識と技術は人を不幸にしますね。

逆さまつげの治療に目頭切開が絶対に必要ということはありませんので、

よく覚えておいてくださいね。

じゃないと目頭切りたがりの人に目頭切られてしまいますよ。

 

さて、前回の記事のかた、うわまぶたを二重にしたかたですが、

実はその2年前くらいに逆さまつげの手術をしています。

mabuta-blog.hatenablog.com

 

 

逆さまつげの手術と術後経過

 

術前の写真です。

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内側の逆さまつげが強い、典型的なタイプです。

 

局所麻酔で手術をしました。

(下まぶたの局所麻酔手術は怖いので、

できれば笑気麻酔か静脈麻酔がおすすめですが、保険ではできません。)

 

デザインです。

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今回はすこしだけ皮膚を切り取ります。

状態によっては皮膚を切り取らない場合もあります。

 

以下、血の苦手なかたは目を細めてみていってください。

皮膚を切開して、その下の眼輪筋を切開したところです。

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「眼窩隔膜に包まれた眼窩脂肪」とありますが、

目の下のクマとりの際にとる脂肪のことです。

逆さまつげの治療でも同時にとれちゃいます。

 

次にもっと深いところをはがしていきます。

瞼板という軟骨のような組織をみつけて、縫合する下準備をします。

 

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今回はLER(Lower eyelid retractor)という膜を瞼板からはがしています。

これはタレ目形成、グラマラスラインの時に縫う膜です。

LERの処理も逆さまつげの後戻り予防に効果ありです。

 

続いて、まぶたの縁に補助切開を行います。

これが後戻り予防に一番重要と考えています。

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まぶたの縁を丁寧に切開するのですが、

これは顕微鏡もしくは拡大鏡で丁寧にやらないと、まつげが乱生することがあります。

乱生とは、まつげが乱れて生えることです。

逆さまつげが治ってもまつげが眼球に当たる可能性があります。

なので慣れてない術者はやらないほうが無難です。

 

これでやっと下準備完了です。

 

まつげを外向きにする縫合をしていきます。

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まつげの近くの眼輪筋・皮下組織と、

瞼板を縫合(中縫い)するのですが、

この糸の通しかたも技術がでます。

下手にやると、タレ目になったり、矯正が甘かったりといいことないです。

私は吸収糸を使いますが、吸収糸特有の炎症反応がすこしでる場合があるので、

ナイロン糸を使うかたもいます。

 

まつげを外向きにする縫合がおわったあとです。

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まぶたの縁の補助切開がパッカーンと開いている状態がポイントです。

しっかり外向きにできている証拠ですね。

 

手術直後の状態です。

痛々しすぎますが下まぶたはあんまり腫れないです。

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こんな状態で綺麗に治るのか心配されるかたもいると思いますが、

安心してください。

綺麗に治ることがほとんどです。

 

術後経過をみていきましょう。

術後7日目です。

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まだまだ痛々しいですね。

 

術後3週間です。

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少しずつよくなってきています。

この時期が一番傷がかたく、赤く、目立つ時期です。

 

術後4か月です。

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かなり馴染みました。

後戻り全くなし。ここまでくれば安心です。

 

術後7か月です。

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ほぼ完成ですが、実はまだ馴染んでいきます。

 

術後2年です。

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傷もほぼわからないくらいにきれいになりました。

まつげの後戻りや脱落もなく順調な経過でした。

ちなみに角度は若干違いますが、術前術後を並べるとこう。

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こうしてみると劇的な変化ですね。

 

そして二重切開をして完成です。

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華やかな大きな目でとても美人になりました。

写真使用のご快諾ありがとうございます。

 

 

私の逆さまつげの治療はこんな感じです。

他院の再発例をよく手術していますが、

私が手術して過去に再発したのは一例だけです。

 

 

逆さまつげの治療をご検討のかたのご参考になれば幸いです。

 

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手術内容:逆さまつげ手術(中縫い法)

早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫、結膜下出血

見た目のリスク:きずのくいこみ、キズアト、眼瞼外反、涙袋の形態の変化など

機能面でのリスク:睫毛内反の再発、睫毛乱生、霰粒腫など

料金:自費治療で40万円(税別)(中縫い法)