形成外科医の王子です。
一足はやく手術おさめしました。
「健康な体と健全な精神があってはじめて手術に全力を注げる」
ということを理由に休みをしっかりとらせてもらうのが私流です。
休むのも仕事です。
なにかに追われて急かされて、
休む暇もなく、自分の体と精神をおいつめている人は、
たいてい、
「大晦日まで〇〇連勤!」
「今年初めての連休です!」
などと忙しいアピールをする傾向があります。
無理にたくさん働いて、時間的にも精神的に余裕もないので
自分のことしか考えれないのです。
だからこそ
「ぼく頑張っているでしょ すごいでしょ」
という感じのアピールになっていくのです。
本当に忙しい人、例えば命をダイレクトに扱う外科や循環器の先生たちは
忙しいアピールなんてしません。
美容外科医と違ってそんな暇はないからです。
頭がさがります。
ちなみに「忙しいアピール」でググると、
となります。
あなたのまわりにもいませんか?
先天性眼瞼下垂の治療
ありがたいことに、
私のもとには先天性眼瞼下垂のかたがけっこうな頻度でおとずれてくれます。
手術歴のないかたも多いですし、前に手術をしたが上がらなかった
というかたも多いです。
そのなかでも眼瞼挙筋の機能が低いかたは、
飛び道具的な手術である
「前頭筋つりあげ術」
をおすすめしてます。
自分の組織である筋膜と、人工物であるゴアテックスのどちらかを主に使います。
私は現在はゴアテックス推しです。
ゴアテックスはやや低矯正になることもありますが、
痛みや筋膜特有の縮みによる合併症がないことが大きな強みです。
前頭筋つりあげ術と、術式の長所と短所については
以前の記事をご参照ください。
今回ご紹介するのは50代男性、
両側の先天性眼瞼下垂症のかたです。
幼少期より症状はありましたが、ずっと未治療だったそうです。
術前。(片目写真掲載の許可を得ています。)
長期にわたる重症の眼瞼下垂であり、
眉毛が一番高い位置まであがりきっています。
またそれに伴うまぶたの伸びとたるみも閉瞼時に顕著です。
挙筋機能はほぼ0に近いので前頭筋つりあげ術しか選択肢がありません。
筋膜移植と、ゴアテックス移植のどちらも説明した上で、
ゴアテックス移植を選択されました。
デザインはこう。
皮膚切除量の設定が難しいですが、よくシミュレーションして決めます。
ゴアテックスを留置したところです。
縫い付け位置もこだわって、妥協せずにすすめます。
直後はこのくらい腫れてます。
直後はきれいなアーチがでるようにしなければなりません。
直後にきれいなアーチがでていなければ、
半年後にきれいなアーチになっている可能性はゼロです。
術後2週間目。
まだまだむくんでいますが、なんだかいい感じです。
この時点で肩こりなどはかなり軽くなったそうです。
兎眼(とがん:目を閉じたときに白目がみえていること)は0.5mmくらいです。
術後3か月でここまで腫れがひきます。
術後6か月。ほぼ完成です。
眉毛の上のきずの綺麗さと下方視したときの眼瞼おくれの程度にも注目してください。
(眼瞼おくれ:下をみたときにまぶたが下がりきらなくて、ギョロ目にみえてしまうこと)
まぶたの開きはこのくらいで十分でしょう。
開きを強くしようとすると、
ドライアイ症状が強くでたり、
眉毛が下がり過ぎたり、
眼瞼おくれ(下をみたときにまぶたがついてこなくて、ギョロ目にみえてしまうこと)
や兎眼が強くでたりします。
この調整具合が最高に難しいです。
組織とゴアテックスのゆるみもあれば、眉の上がり具合の変化もあるからです。
写真でみると、
術後2週の時点での目の開きと術後6か月の時点での目の開きはほぼ同じなので、
手術後1-2週の時点で、再調整が必要そうならすぐに調整します。
これもゴアテックスの利点ですね。
さて、術前術後の写真を並べてみましょう。
開きすぎでもなく、開かなすぎでもない、ちょうどよい具合です。
これがこの手術で目指すところです。
そして眉がかなりさがりました。
激変しましたね。
眉の上のきずもどこかにいってしまいました。
二重もきれいです。
ちなみに二重のきずはこんな感じです。
ほどよくゆるさのある綺麗な二重です。
筋膜移植ですと、
食い込みの強い、はりついたような動きのない二重になりがちですが、
ゴアテックス移植だと筋膜移植よりも自然な二重を作れるような印象です。
症例写真使用のご快諾ありがとうございました。
前頭筋つりあげ術は、
強制的にまぶたとおでこをつなげちゃおうという飛び道具的な手術です。
うまく使えば見た目も人生も激変しますが、
うまく使わないと修正は大変です。
言われるがままが一番だめですよ。
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手術内容:眼瞼下垂症手術(前頭筋つり上げ術)
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、人工物への感染、角膜潰瘍、角膜びらんなど
見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、まぶたの開きの低矯正、
過開瞼、まぶたのアーチの不整、二重の左右差、二重のくいこみ、
キズアト、二重の消失、二重が浅くなる、まつ毛の内反など
機能面でのリスク:眼瞼おくれ、兎眼、ドライアイ、角膜びらん、角膜潰瘍、人工物の露出など
料金:この治療はいまのところ、保険適応でのみ行っています。
3割負担で片側6万円弱、両側で12万円弱です。