形成外科専門医の王子です。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や開瞼失行(かいけんしっこう)という病気をご存知ですか?
痙攣といってもただのピクピクではありません。
「まぶしい。」
「まぶたが重だるい。」
「目を閉じているのが楽。」
「運転や作業をしていると急に目があかなくなってしまう。」
まぶたを閉じる筋肉の異常により様々な症状がでてきます。
いまだ解明できていないことが多く、
診断についても採血検査や画像検査などクリアに診断できるものではありません。
医師の診察や問診で診断をつけなければならない病気です。
他人の想像を超えるくらい辛すぎる症状なので、
どうにかして治したいと眼科や形成外科を受診するのですが、
根本的に治す方法はありません。
対症療法としては、ボトックス注射でまぶたを閉じる筋肉の動きをやわらげたりすることや、
場合によっては抗不安薬などの内服を行います。
でもそれでもよくならない人もいます。
そしてまぶたが重たいということで、なにも疑わずに眼瞼下垂症手術を受けてしまうと、
症状が悪化するかたもいますので要注意です。
早くよい治療法が見つかることを期待しています。
またいつかこのことだけに集中して記事を書こうと思います。
さて、本日は若返りをテーマにした治療です。
眼瞼下垂手術と眉下切開の併用でさわやかで若々しい二重まぶたをつくる。
40代女性 ハードコンタクトレンズを30年程度使用していたかたで、
まぶたの重たさと肩こりを主訴にいらっしゃいました。
術前の状態です。
まぶたがかなり重たそうです。
派手な平行型はNG、できれば末広。
でも二重幅はある程度欲しいとのことでした。
しかしここで注意しなければならないのは蒙古ひだの張りの強さです。
蒙古ひだの張りが強いかたは平行型にすると不自然な二重になることが多いです。
つまり眼瞼下垂の手術で皮膚をそこそこ切り取ってしまった場合、
不自然な二重、ねじれ感の強い平行ちっくな二重になってしまうのです。
だからといって皮膚のたるみを残していると、二重幅がでません。
なので眼瞼下垂手術でまぶたの中身を治したあとに、
眉下切開が必要になります。
自然な二重を目指すためには二回の手術が必要になることもあるわけです。
その場合は最初の手術をする前に、
眉下切開も必要になります
としっかりと説明することも大切です。
というわけでまずは眼瞼下垂手術。挙筋前転法です。
デザインはこう。
二重の幅は5mm、伸ばして7.5mmです。
三角目っぽい感じを改善させるために外側を少しだけあげたデザインです。
目尻をはねあげるデザインは私にはあまり理解できません。
ちなみにこのかたはアイラインのイレズミがありますが、
これがなかなかのくせものです。
これがあることによって術後に見栄えが全然違うので、
できれば術前にレーザーで薄くしておきたいところですね。
正確で丁寧な操作で挙筋腱膜を固定します。
手術直後(あおむけ)。
腫れない工夫を随所にしておりますのであまり腫れてませんね。
抜糸時(術後7日)。
内出血も少なく、腫れも少ないですね。
メガネをかけて外出できる時期です。
術後1か月。
まだまだ傷が硬い時期ですが、とてもよい結果です。
開きすぎでも開かなすぎでもない、自然なまぶたの開きになりました。
そしてここから眉下切開でさらなる若返りを狙います。
3か月あければ眉下切開可能です。
術後3か月、眉下切開のデザインです。
最大切除幅は9mm。
二重を広げたいところをしっかりと広げる、わりと攻めたデザインです。
直後の腫れはこのくらいです。
眉下切開は麻酔の打ち方で腫れが全然違います。
色々とコツがあるんです。
抜糸時(術後7日目)。
内出血が少しありますが、目立たない範囲かと思います。
手術直後に長時間運転されたそうで、それも影響あるかもしれません。
ということでこれから手術を受けるかたは、手術直後は運転しないでくださいね。
眉下切開後1か月、眼瞼下垂手術後4か月。
よっしゃ!という感じです。
私はチキンボーイなのでお化粧を落としてくださいとなかなか言えない性格です。
メイクあり画像にご理解ください。
眉下切開後3か月です。
ここまでくれば成功ですね。
きずの赤みがわずかに残る時期ですが、きず目立たないですよね?
眉下切開後6か月、眼瞼下垂手術後9か月です。
お化粧パワーもありますが、とっても綺麗です。
もともとの綺麗さに磨きがかかりました。
眉下のきず、これなら許容できますか?
術前術後の写真を比べてみます。
ダイナミックな変化です。見た目も変わりましたが、
不思議と雰囲気も変わってますね。明るいハツラツとした感じがあります。
写真使用のご快諾ありがとうございました。
こうやって正しい治療をすれば、ほとんどのケースで綺麗に仕上がります。
しかし、他院で手術を受けて悲しんだり困ったりするかたが多くて残念です。
正しい治療が広まりますように。
ところで眉下切開の症例をSNSに出しているお医者さんはたくさんいらっしゃいますが、
写真が汚くてきずもよくみえないし、
きずと眉毛が離れてるし、
きずの向きすら左右対称じゃないし、
もはや宣伝というより逆効果なのではいつも思います。
私は、
あせらず、地道にコツコツと、辛抱強く、謙虚な姿勢で。
これからも診療を続けていきます。
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手術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術)
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫
見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、二重の左右差、まぶたのアーチの不整、
予定外重瞼(三重)、二重のくいこみ、キズアト(場合により2本)、
二重の消失、二重が浅くなる、眉毛がさがる、うわまぶたが厚ぼったく見える、など
機能面でのリスク:兎眼、ツッパリ感、視力の変化、眼瞼痙攣、ドライアイ、角膜炎、霰粒腫など
料金:保険適応で約45000円(3割負担)
自費治療で約60万円(税別)
手術内容:眉下切開(眉毛下皮膚切除)
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、赤み、埋没糸膿瘍など
見た目のリスク:きずが目立つ(傷の色、幅、位置など)、皮膚のつれ、眉毛がさがる、まぶたのたるみの残存、二重の変化など
機能面でのリスク:ツッパリ感、しびれ、感覚鈍麻など
料金: 自費治療:40万円(税別)