形成外科専門医の王子です。
ものを食べる前や顔を触る前に手洗いうがいをすること、
診察の前後で手をアルコール消毒すること、
処置の際にはマスク、手袋、場合によっては帽子を着用すること。
感染対策としてこれらのことをしっかりとやっていますが、
よく考えたら当たり前のことですよね。
これをいい機会に、いい習慣がすべての医療者に根付きますように。
本日は眼瞼下垂の他院修正です。
70台後半の女性。
他院眼科で2回手術を受けたそうですが、
全然変わらないどころか悪くなった気もする
とのことで受診されました。
術前。
しんどそうです。
挙筋機能(まぶたをあける力)が低下しており、
筋原性、神経原性の眼瞼下垂も疑われる状況です。
筋原性、神経原性の眼瞼下垂とは、筋ジストロフィーや重症筋無力症などに筋肉や神経の病気に伴う眼瞼下垂のことで、挙筋腱膜前転術では十分な効果が得られません。もとの病気の治療や、場合によっては前頭筋吊り上げ術を行います。
様々な場合を想定して手術に臨みます。
デザインはこう。
前医の切開線(青い点線)がとても高い位置にあり、ここで二重に折れています。
この線とは別の、黒い切開線の下のラインのみを切るプランとしました。
眼瞼下垂の治り具合がよく、眉毛がそこそこ下がりそうで皮膚のかぶりが増えそうと
手術中に判断した場合に、皮膚切除を追加するデザイン(黒い線の上縁)も書いてあります。
キズ2本線による二重幅狭く修正ですね。
前医の切開線の癒着を丁寧に剥離し、前の二重を完全に解除したのち、
挙筋腱膜を探します。慣れていればすぐ見つけられますが、
慣れていないと気がつかないうちに挙筋腱膜に切り込んだりとダメージをあたえてしまうこともあるようです。
挙筋腱膜を丁寧に固定しました。
「挙筋腱膜を解剖学的に正しい位置に戻す」
という私の手術のコンセプトからすると、やや挙筋短縮の度合いが強いです。
しかし、このかたの術前の目の開きからすると、この程度でよいと判断しました。
手術直後。
ご高齢のかたは腫れが早く強くでるので、手術中の形態の判断が難しめです。
そしてキズ2本線による二重幅狭く修正なので、前の切開線と二重がでないような処置をしないといけませんね。
今回はご年齢と癒着の度合いを考慮し、
つりあげだと強すぎると判断して袋とじ縫いとしました。
手術後7日目、抜糸の日です。
腫れがありますので、開きはまだまだです。
ご高齢のかたほど回復に時間がかかります。
術後3か月。ようやく腫れがひいてきたころ。
とてもよい結果です。
術前後の比較写真を。
ご高齢のかたの眼瞼下垂手術は独特の難しさがありますが、
二重のライン、まぶたのカーブ、開き具合、すべて上出来。
術者としても満足ですが、
なによりもご本人がとても喜んでくださったことが一番嬉しいことです。
写真使用のご快諾ありがとうございました。
眼瞼下垂手術を受けて不満足な結果になっても
患者さんがご高齢のかたの場合、ご本人もご家族もあきらめてしまうかたが多い印象です。
とても悲しいことです。
でもあきらめないでください。
壊滅的なダメージがなければ治せる場合がほとんどです。
ご本人かご家族のどちらかがあきらめなければどうにかなるもんです。
あきらめずに修正手術に精通している医師を探してみましょう。
何歳になっても見た目は大切です。
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手術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術)の他院修正
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫
見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、二重の左右差、まぶたのアーチの不整、
予定外重瞼(三重)、二重のくいこみ、キズアト(場合により2本)、低矯正、過矯正、
二重の消失、二重が浅くなる、内側と外側の二股、眉毛がさがる、うわまぶたが厚ぼったく見える、など
機能面でのリスク:兎眼、ツッパリ感、視力の変化、眼瞼痙攣、ドライアイ、角膜炎、霰粒腫など
料金:保険適応で約23000円(3割負担、片目)
自費治療で約42万円(税別、片目)