形成外科専門医の王子です。
専門医についてふと感じたことを。
形成外科専門医って誰でも取れるし、大した資格ではないんですが、
維持にお金と時間がかかります。
指導医をもっている医師なんてもっとかかります。
そのうえ専門医や指導医をもっていても病院からのお給料は全く増えないというハードモード。
そりゃ資産形成やQOLに敏感な若い形成外科医は指導医なんて目指さないし、
専門医とったらさっさとやめますよ。
そうやって形成外科専門医は大手美容外科に雇われるための資格になり下がっていくのです。
しかも雇われ先は形成外科系の美容外科ではなく、JSAS系の美容外科に。
形成外科学会のベテラン医師たちはJSAS系の美容外科を卑下することが多々あるように見受けられますが、結局力を持っているのはお金を稼ぐ力を持っているJSAS系で、
形成外科専門医はどんどんそちらへ流れていくという結末です。
なんとも皮肉な結果です。
私はJSAS系の美容外科も商売上手ですごいなと思いますし、
美容外科にすぐ就職する形成外科医も「お幸せに」と思いますが、
形成外科学会の今後が心配ですね。
ここからのリカバリーは可能なのでしょうか。
というわけで本日は人気手術の逆さまつげ手術について。
逆さまつげ手術で涙袋が増える?下三眼が治る?
逆さまつげで悩まされているかたは想像以上に多く、
連日お問い合わせをいただきます。
多いときで週に三件くらい逆さまつげ手術をしてます。
しかし何十回、何百回経験しても
逆さまつげ手術はとても難しい手術なのです。
逆さまつげ手術の難しさの要因は主にこの3つ。
- 二重まぶたのきずと違って、下まぶたのきずは目を開いているときに見える。
- 逆さまつげ特有の後戻り。
- 涙袋の変化が読めない。
悩みすぎて禿げそうになるレベルですが、
これを克服するためにいろいろと研究しています。
まつ毛の角度を自由にコントロールできる日が来ることを祈りながら、
私とまつ毛との終わりなき戦いはこれからもずっと続きます。
さてあまり前置きが長いと、こいつどうかしたのかと思われるのもイヤなので
手術前の写真を。
かなり重症の逆さまつげです。
コンタクトしてないと痛みが我慢できないレベルでしょう。
それと下三白眼(黒目の下の白目が見えること)も目立ちますね。
逆さまつげ評価には必須の斜めからの上向き写真。
手ごわいです。
後戻りの恐怖がよみがえります。
しかし立ち向かうしかありません。
すべてはまつげの角度のために。
いろんな副作用をすべて説明して、意思統一して手術にのぞみます。
手術デザイン
下まぶたはデザインが消えやすいので青い極細マッキーを使ってデザインすることが多いです。
しかし、私にとってはこれでも線が太い。
もっと細いペンを使いたいのですが、そうするとデザインが消えやすい。
結果、悩みながらもケースバイケースでどちらも使います。
こんな小さなことに真剣に悩める私は幸せな証拠でしょうか。
と脱線しそうなので話を戻すと、
手術は局所麻酔で1時間半-2時間。
時間かけすぎ!
といわれてもしょうがないですね。
何事も一生懸命なので許してください。
最近は笑気麻酔を使って手術することが多いです。
かなり楽ですよ。
手術内容は盛りだくさんです。
こちらの記事を参照してください。
すべてはまつ毛の角度を外向きにするのに必要な操作です。
手術1週間後、抜糸の時はこんな感じ。
しっかり外向きになってます。
もう少し外向きでもいいくらいです。
まつ毛のキワのピンクの部分もよくみえていて綺麗ですね。
でもはっきりいって、すごく目立ちます。
斜めから。
外向けすぎと思われるかもしれませんが、安心してください。
必ず後戻りがあります。
(ちなみにもう少し強く外向きにもできますが、ダウンタイムが長引く傾向があります。)
術後2か月。後戻りが落ち着くころ。
いい感じの角度です。
きずも目立ちません。
なんかすっきりした感じがすごいです。
きずの感じがよくわかる斜め写真。
いい経過です。
きずはもっと目立たなくなっていきます。
今後も後戻りはわずかにあるかもしれませんが、
元通りにはなりませんので安心ですね。
写真を並べて比較してみましょう。
ところで
涙袋が増えてる!
下三白眼が治ってる!
と思ったかたはいませんか?
いなければここで終了するのですが、
いるということにして解説します。
下三白眼については、手術中に下三白眼を改善させるような操作をしているので、
よくなることが多いです。
また、術前に逆さまつげが目にあたる不快感があると、
まつげがあたらないように下まぶたを無意識にさげていることもあります。
つまり逆さまつげ自体が治ることで、下まぶたをさげる力が抜けて、三白眼が治る傾向にあるのです。
(独自理論なので信じるか信じないかはあなた次第)
そして気になる涙袋について。
涙袋は、眼輪筋という目を閉じる筋肉が縮んで膨らむことでできています。
しっかりとまつ毛の角度を調整する逆さまつげ手術ではその眼輪筋を切断するので、
理論的には涙袋が変わらないか減るはずです。
ほとんどの教科書には眼輪筋を切除するようにと記載されていますが、
切除するのであれば眼輪筋は必ず減ります。
私の経験上、10人中5人くらいは涙袋が減ります。残りの5人はほぼ変わらないです。
しかし今回のかたは涙袋が増えました。
なぜか?
答えはわかりません。
わからないこともあるのです。
以下推測にはなりますが、
逆さまつげがある状態
→痛いので下まぶたをひきさげる力が強く働く。
→下まぶたを閉じる方向に働く眼輪筋の力が入りにくい。
(眉毛をあげながら目をギューッと閉じてみてください。閉じにくいでしょう?)
→涙袋が膨らみにくい。
という説を考えています。
だからもともと涙袋ができる素質のあるかた、すなわち眼輪筋が発達しているかたは、
逆さまつげで涙袋が増える可能性があるのです。
むしろ、増えるという言葉ではなく、
といった表現のほうが正しいでしょう。
最後に斜め写真の比較です。
綺麗ですね。
まつ毛の奥のピンクの部分がみえるようになり、
目をおおきく見せる効果もありますね。
意外とこれを求めて手術を受けるかたもいるくらいです。
写真使用のご快諾ありがとうございました。
余談ですが、この手術は二重まぶたの手術より時間がかかります。
頑張ります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
手術内容:逆さまつげ手術(中縫い法)
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫、結膜下出血
見た目のリスク:きずのくいこみ、キズアト、眼瞼外反、涙袋の形態の変化など
機能面でのリスク:睫毛内反の再発、睫毛乱生、霰粒腫など
料金:自費治療で40万円(税別)(中縫い法)