王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重と逆さまつげと

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂と逆さまつげなどの治療について紹介していきます。

ROOF(ルーフ)切除とは。眼瞼下垂手術と併用してまぶたの重みを減らす。10代男性

形成外科医の王子です。

 

コロナの第2波こわいですね。

感染者数が増えているのに、街中はわりと楽観ムードなので心配です。

気を引き締め直していきましょう。

 

本日はROOF(ルーフ)切除について。

 

本当のROOF切除とはこういうものです。

 

ROOF(ルーフ)って知ってますか?

ROOFとは眼輪筋(がんりんきん)の下にある固い脂肪のことです。

正確には後眼輪筋脂肪または隔膜前脂肪といいます。

Youtubeで眼窩脂肪をひっぱりだす動画はあっても、

ROOFを切り取る動画はないですよね。

なので眼窩脂肪と違ってなかなかイメージがつきにくいと思います。

 

眼窩脂肪は柔らかくてプニプニした脂肪。

ROOFは固くてベタッとした脂肪。

 

もちろん柔らかくてプニプニした脂肪のほうが切り取るのは簡単です。

だから大手美容外科に行くと、埋没法と一緒に脂肪取りをすすめられるのですよね。

 

そしてそのへんの美容外科にいくと、

「あなたはまぶたが分厚いからROOF(ルーフ)切除をしたほうがよい。」

と言われて別料金で10万〜20万くらい請求されることがよくあります。

 

でもほとんどの場合、ちょびっとだけROOFを切り取っているだけです。

なぜならROOFをしっかり切り取るにはある程度の技術が必要だからです。

 

もはや切り取っていない場合もあるかもしれません。

他院でROOFを切除されたというかたの修正手術の際にROOFが全て残っていたこともありました。

皮膚を縫い閉じればわからないですもんね。

コワイ。

 

さて、症例をご紹介いたします。

 

10代男性。

まぶたの重さ、頭痛を主訴にご来院。

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眉毛と目の距離が近く、皮膚の厚みと脂肪の厚みもあり、

正直難しいまぶたです。

 

このようなタイプのまぶたにはROOF(ルーフ)切除が有効なので、

まぶたの開きを強化する目的のための眼瞼下垂手術とROOF切除を併用することとしました。

 

デザイン。

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ROOF切除の効果をだすためには、

眉毛のすぐ下くらいまでしっかりとROOFを切り取る必要があります。

手術スタート。

 

まずは腫れが少ないうちに挙筋前転を行うのが大切。

腫れたらまぶたの形も目の開きの左右差もわからなくなってしまいますからね。

 

挙筋腱膜を糸で固定したところ。

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きれいに一点固定でキメました。

 

その後ROOF切除へ。

 

マーキングした範囲まで、ROOFの上面、つまり眼輪筋とROOFの間をはがしましょう。

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きちんとした技術でこの操作しないと、術後に三重まぶたが出やすくなるので注意。

 

つづいてROOFの下面、つまりROOFと眼窩隔膜の間をはがします。

ROOFをつかんでいるところです。

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このようにきれいに出したROOFを止血しながら切り取っていきます。

 

まず向かって左側だけROOFを切除しました。

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眉毛の下のふくらみのすっきり感がすごいです。

 

角度を変えてみてみると、

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やっぱりすごいすっきりしてます。

もはや凹んでいるくらい。

 

切り取った眼窩脂肪とROOFを並べてみました。

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かなりの量ですね。

このくらい取らないと効果がしっかりだせません。

これが本物のROOF切除です。

 

手術直後の状態。

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内出血も少なく、二重の引き込みもいい具合です。

ROOFを切除したところに血がたまってしまうと困るので、

ドレーンという血抜きの管をいれてあります。

 

 

気になる術後経過にいきましょう。

 

すこしとんで術後3か月

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目の開き、明らかによくなっています。

そして眉毛の位置が少しさがって、眉と目が近づいてますね。

眉と目が近づいた分、まぶたの重たさがでがちなんですが、

ROOF(ルーフ)切除をしっかりと行った影響で、

まぶたの重たさを最低限におさえられています。

 

さらにとんで術後1年半。

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いい感じです。

術後3か月の時点よりまぶたがすっきりした気がしますね。

これには2つの理由があります。

 

ひとつは、手術後1年ほど経過したことにより眉の位置が少し高く元に近づいたこと。

もうひとつは、二重のひきこみがややゆるんだ影響で二重の上のモッタリ感が弱まったこと。

 

。。。。

 

二重がゆるんだことですっきり見えてるのはありがたいのですが、

二重のゆるみはほっとけません。

(皮膚が分厚いかたや、眉毛と目が近いかたは二重がゆるむことが時折あります。)

 

というわけで二重のくいこみを強くする再手術を行いました。

初回手術後2年、再手術後6か月です。

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綺麗な目元です。

きずの赤みはまだまだひいていきます。

 

最後に術前術後を比較してみましょう。

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視界も広がり、見た目もすっきりしています。

眉毛がさがってもこのくらいのたるみ感ですんでいるのはROOF切除をしたからです。

やりがいがある治療ですね。

写真使用のご快諾ありがとうございました。

 

同じお悩みのかたも多いと思います。

脂肪切除、特にROOF切除を適切に行うことで少しでも軽い目元にすることが可能です。

どの脂肪を切り取ったほうがよいかは人によって様々なので、

しっかりと診察した上で適切な判断をすることが大切です。

 

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手術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術)+ROOF切除

早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫

見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、二重の左右差、まぶたのアーチの不整、

予定外重瞼(三重)、二重のくいこみ、キズアト(場合により2本)、低矯正、過矯正、

二重の消失、二重が浅くなる、内側と外側の二股、眉毛がさがる、うわまぶたが厚ぼったく見える、など

機能面でのリスク:兎眼、ツッパリ感、視力の変化、眼瞼痙攣、ドライアイ、角膜炎、霰粒腫など

料金:保険適応で約45000円(3割負担)(保険適応ではROOF切除は行なっておりません。)

   自費治療で60万円(眼瞼下垂手術)+18万円(ROOF切除)