王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重と逆さまつげと

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂と逆さまつげなどの治療について紹介していきます。

痛い?痛くない?局所麻酔でのまぶたの手術について

王子です。

 

日々診療しているなかで、

患者さんたちからの情報で驚くことが多いです。

 

他院での対応や金額、手術中のこと、、いろいろとあります。

 

特に多いのは痛みに関すること。

 

「前回埋没法をしたときに、痛すぎてトラウマになってます。」

「他院で眼瞼下垂手術をしたとき、手術時間は長いし、途中痛すぎて死にそうでした。」

 

よく聞く感想です。

 

手術という名の拷問でしょうか。

 

 

「痛いといっても、局所麻酔を足してくれなかった。」

「痛いといったら怒られた。」

「麻酔を足してくださいといったら、

『麻酔をたすと筋肉にも効いてまぶたが開かなくなるので我慢して。』

といわれて耐え続けた。」

 

これもよく聞く感想です。

痛かったら言ってくださいね〜と言われた通りに

痛いといっただけなのに

なぜ怒られなければいけないのか。

謎です。

 

患者さんが痛みに耐えつつも少し動いてしまったことを

手術失敗の言い訳にしてきた美容外科医もいたそうです。

 

恐ろしい話です。

 

 

局所麻酔薬が開発されて100年以上。

医師になって局所麻酔薬を注射するようになって○○年以上。

 

なぜ局所麻酔をうまく使えない医師がいるのか。

手術中に痛みでつらい思いをさせる医師がいるのか。

 

それは

不器用か、経験がないか、思いやりがないか、なにも考えてないか、

そのどれかもしくは全てなのではないかと思います。

 

 

でも

そんな偉そうなことをいってる王子はどうなのか

痛がらせたら容赦しないぞ

思うかたもいるでしょう。

 

自分もかけだしの頃は、手術中に強い痛みを感じさせてしまうこともありました。

しかし、経験を積むにつれ、

どこにどんな薬をどのくらい注射したら痛みを感じずにいられるのか

痛みを感じるポイントはどこなのか

だいたいわかってきました。

時には自分の体に注射してみて痛みを比べることもありました。

自分で体験することも大切なことですね。

 

手術がどんなにうまくても、手術がとても痛かったと言われたら

それはほぼ失敗に近いと思っています。

だからこそ麻酔の打ちかたにはこだわりがあります。

 

 

いまでは私の眼瞼下垂手術は、

全然痛くなかったと言われることがほとんどです。

そう言われることが喜びでもあります。

 

(もちろん例外もあります。

修正手術の場合は注射の痛みが初回手術より強く、麻酔の持続時間も短い印象です。

それでもできるだけ痛くないように打つコツがありますのでご安心ください。)

 

 

 

局所麻酔薬をなるべく痛くないように注射するコツ

コツはいっぱいあります。

したの3つは教科書に書いてあるので常識でしょう。

 

注射針の細さ

薬剤を注射するスピード

薬剤のpHの調整

 

それ以外にもいくつかコツがあります。

そのなかでも一番重要なのは、患者さんをなるべくリラックスさせることです。

緊張した状態での注射はとても痛いです。無意識のうちに顔の筋肉がこわばり、

組織の内圧が高まりやすくなるので、痛みは強くなります。

エビデンスなんて知りませんが、実際痛いものです。)

 

緊張した患者さんを配慮した声がけをする。

顔をさわるときには丁寧にそっとさわる。

 

これらを徹底するだけでも痛みは格段に違います。

どんなに急いでいても省略しません。

目を閉じているぶん、聴覚と触覚が敏感になっているので、

そこを刺激すると緊張が高まります。

 

 

でもさ、静脈麻酔を使用すれば別に緊張とかなくなるんじゃないの?

 

というかたもいるでしょう。

確かに静脈麻酔を使用すれば、麻酔の注射の際に痛いという感覚はほぼまぎれます

覚えてないくらいです。

しかし、私はうわまぶたの手術での静脈麻酔は使用しないことがほとんどです。

理由は、まぶたの開きを調整し始めるまでにかかる時間は15分程度なので、

少しでもぼーっとしている状態では正確な評価ができなくなる可能性があるからです。

 

あいまいな要素は少しでも排除したいのです。

静脈麻酔を使うかどうかは医師のポリシーにもよりますが、

まぶたの手術を多くやる形成外科の医師は静脈麻酔を使わない派が多い印象です。

 

 

でもさ、笑気ガスはどうなの?

 

というかたもいるでしょう。

笑気は痛みをとる作用とリラックスさせる作用があるガスです。

歯科医院、美容外科などでよく使われます。

吸うとふわふわするやつです。

実際、笑気を吸ってから麻酔薬を注射するととても楽です。

なので笑気に関しては私は賛成派です。

笑気を使える環境で、笑気を吸っても大丈夫なお身体で、ご本人の希望があれば

使います。

問題点としては、たまに強い吐き気や気持ち悪さがでることがありますが、

うまく使えば有用なツールです。

(笑気は大気汚染の問題もありますので、一概にいいとはいえませんが。)

 

 

 

今回は症例の紹介ではなく、局所麻酔について解説してみました。

今後も患者さんが知らないこと知りたいことをいろいろと解説していこうと思います。

 

 

最後にひとこと。

痛いのはみんないやです。私もいやです。

人の痛みがわかる人に手術をしてもらいたいですね。