王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重と逆さまつげと

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂と逆さまつげなどの治療について紹介していきます。

霰粒腫(ものもらい)の手術はなぜ見送られるか。

王子です。

 

本日はお困りのかたが多い霰粒腫(ものもらい)についてのコラムです。

 

 

私のもとにカウンセリングにくるかたのお悩みのなかで、かなり多いのが霰粒腫です。

 

ものもらいができて困り果てて、検索しているうちに私の古きブログにたどりつくようです。

 

自慢でもなんでもないですが、北は北海道、南は沖縄、海外はドバイからも患者さんがいらしたことがあります。

 

しかし、なぜ私のところにたどりつき、手術を受けることになるのか。

 

答えはいたってシンプル。

 

「霰粒腫の手術をしてくれる眼科が少ない」からです。

 

ほりさげていきましょう。

なぜ霰粒腫の手術をしてくれる眼科が少ない少ないのか。

 

「眼科医が手術をすることでの病院側のメリットが少ない」からです。

 

んなわけあるかい!と思うでしょう。

 

んなわけあるんです。

 

あくまで空想ですが、私が眼科医だと仮定した場合に手術したくない理由はいくつかあります。

 

一番大きな理由はというと、

 

霰粒腫は二重まぶたや皮膚との関連性があり、整容面での問題が出てくることがあるからなんです。

眼科はあくまで眼球を見る仕事という概念から逸脱する上に、整容面での変化のクレームのリスクまである。

 

そんなことやりたくないですよ。(もし私が眼科医だったら)

 

だって霰粒腫の手術をするのと、いろいろ検査して点眼や軟膏を処方するのも病院の収入は大きく変わらないんですもん。

 

これこそが二番目の理由

 

売り上げがそこまで変わらないのであれば、リスクがなく、所要時間が少ない方を選ぶのは経営の観点からは当然のことです。しかも治らなければ再診もして再度検査や処方もできます。

 

眼科医になったと仮定した私を非難しないでください。

非難するべきは霰粒腫の保険点数が低く設定されていることなんです。

保険点数とは、行った医療行為に対する病院の報酬で、国が定めているものです。

 

具体的に点数や自己負担額を考えていきます。

このページがとっても参考になります。

455.眼科に行ったらお金はいくらかかるの? | 池袋サンシャイン通り眼科診療所 (ikec.jp)

私も医療事務が専門ではないのであくまで参考にとどめてください。

 

ものもらいを主訴に眼科を受診したとして、

①初診時に各検査と点眼処方を行った場合の概算自己負担金額(自己負担3割)

初診料 850円

屈折・視力・眼底・前眼部・眼圧・角膜曲率半径検査 2240円

処方箋料 200円

計 3290円(病院の収入は約10967円)

 

②初診時に検査をせずに霰粒腫手術をした場合の概算自己負担金額(自己負担3割)

初診料 850円

手術料 2100円(k214霰粒腫摘出術)

処方箋料 200円

計 3150円(病院の収入は約10500円)

 

③再診時に霰粒腫手術をした場合の概算自己負担金額(自己負担3割)

再診料 220円

手術料 2100円(k214霰粒腫摘出術)

処方箋料 200円

計 2520円(病院の収入は約8400円)

 

 

しーん。としますね。

もちろん検査をしてから、手術予約をして、再診時に霰粒腫手術をしたら一番高くなりますが、問題はそこではないです。

 

①の点眼の処方の際の自己負担額や病院収入よりも、③の手術した場合の自己負担額や病院収入が低いことが問題です。

 

手術は衛生物品や場所や助手など様々なコストがかかります。すべて病院負担です。しかもある程度の時間がかかります。消毒や麻酔なども含めたら最低でも15分は必要です。そして二重まぶたなどの整容面でのクレームリスク。

 

そんなことよりも、患者さんを各種検査したうえで点眼の処方をして、外来をまわしたほうが収益性がはるかに高く、リスクも少ない。

 

だから、私が眼科医だったら霰粒腫の手術はしたくないのです。

 

むしろ霰粒腫の手術をきちんとやってくれる眼科は患者さん想いの良い病院だと思います。

(手術をやらない病院が悪いといっているわけではありません。)

 

文句ばっかり言ってないで解決策は?

 

 

霰粒腫摘出術の手術収入を上げることです。

上述したとおり、現在は手術料金が3割負担で2100円、病院側の収入は7000円です。(k214霰粒腫摘出術)

 

時間やコストを考えると安すぎるので、点数を上げる必要があるんです。

 

でも現実的ではなく、実現は不可能です。

 

なぜなら政策も世論も医療費削減の方向に向かっているからです。

 

外来指導管理料なども削減の対象になっているなかで、

手術点数を上げる方向性にはなりません。

 

悲しい話ですがこれが現実です。

 

まとめると、

 

国民皆保険で低料金で治療を受けられるはずなのに、

逆にその低料金が裏目にでて、

霰粒腫の手術を受けられない人が多発しているのです。

 

「ものもらいができて何件も眼科にいきましたが、眼球の検査をして点眼や軟膏をだされるだけでいっこうに良くなりませんでした。なんなら悪化してきてます。」

 

私の外来ではこんなセリフを聞くことが多々あります。

きっとこれからも何回も聞くことになるでしょう。

霰粒腫ができたとしても適切なタイミングで手術を受けられるような世の中になってほしいと切に願います。