王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂の治療について紹介していきます。

先天性眼瞼下垂症(重度)の前頭筋つり上げ術 〜筋膜移植術〜 10代男性

形成外科の王子です。

 

先日眼瞼下垂手術を受けていただいたかたが、

「手術を受ける病院探しの際に、ツイッターがあってよかったです。」

とおっしゃってました。

お役に立てたことはとても嬉しかったですし、

SNSでの情報収集はときに有用であることは間違いありません。

しかし、なかには間違った情報も多く存在しますので情報を選ぶ力が必要です。

知らないところで見えない力がたくさん働いていますから。

 

さて本日は筋膜移植による前頭筋つり上げ術です。

 

挙筋機能が低いかたの最終手段の手術

挙筋前転法をやったが全然まぶたが上がらなかった。

こんな場合の飛び道具的な手術が

前頭筋つり上げ術です。

 

まぶたを開く力(眼瞼挙筋の力)がないのであれば、

眉毛をあげる力(前頭筋の力)を使ってまぶたを開けてしまおう

という大胆な手術です。

眉毛をあげる筋肉とまぶたを直接連結させてしまうのです。

 

中等症から重度の先天性眼瞼下垂や、重度の加齢性眼瞼下垂症、

ミオパチーや重症筋無力症などの筋肉や神経に原因のある眼瞼下垂症

に対して行うことが多いです。

 

でも、はっきりいって

難しいです。

 

 

では症例の紹介です。

高校生の男性です。生まれてからずっとまぶたが開きにくい状態でしたが、

一度も手術受けないまま10数年経過していました。

手術を躊躇していたのではなく、手術の存在を知らされてなかったのです。

術前の写真です。

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なるべくあごをあげないで目を開けてもらった状態です。

おでこに力が入っているのがわかりますが、

黒目はまったくでていません。

 

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目を閉じるとこのようにおでこの力が抜けて眉毛が下がります。

 

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できるかぎり目をひらいてもらった状態です。

眉毛を限界まであげて、顎をかなりあげて、やっと黒目がみえるようになります。

決して力を抜いているわけではありません。

 

よくここまで耐えて来ました。

 

全身麻酔下で太ももの筋膜を用いた前頭筋つり上げ術を行いました。

デザインと採取した大腿筋膜です。デザインもポイントのひとつです。

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そして採取した筋膜をまぶたの中に通して調整をします。

白い線は筋膜のイメージです。

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手術直後です。

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黒目がぎりぎりでるかでないかくらいのひきあげとしています。

 

手術直後でこのくらいしか上がっていないんじゃ、上がりが足りないのではないかと

心配するかたもいるかもしれませんが、

術後1か月くらいしてから徐々にまぶたが開いてくるのがこの手術の特徴です。

手術2か月後の写真です。

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まだむくみは残っています。

そしてこれからもう少し上がっていきます。

なぜかというと、

筋膜というものは徐々に縮んでいくからです。

 

術後1年の写真です。普通の開瞼、閉瞼、上方視、下方視、最大開瞼です。

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向かって右の眉毛が高い癖があるので若干の左右差はありますが、

とてもよい仕上がりです。

まぶたのカーブをきれいにだしにくい手術なのですが、

よい形ができています。

なお、下を見たときの眼瞼おくれ(がんけんおくれ)は避けられない症状です。

1年たてば、筋膜の縮みも安定します。

 

術後2年の長期経過写真です。普通の開瞼、閉瞼、上方視、下方視、最大開瞼です。

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二重も自然でとてもよいですね。

写真使用のご快諾ありがとうございます。

ちなみに筋膜をとったところのきずあとはこちら。

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 眼科の教科書を読むと、筋膜採取は手技が煩雑で、きずあとがとても汚く、

おすすめできない。と書いてありますが、

形成外科医が縫ったきずはとても綺麗です。

 

最後に術前術後の写真を並べてみます。

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手術が大成功し、見た目も機能面も改善し、人生も変わったことかと思います。

いい形で彼の人生に関われたことを嬉しく思います。

これこそが形成外科のやりがいであり、醍醐味です。

 

悩んでいるかたのお役にたてれば幸いです。

 

次回は前頭筋つり上げ術のリスクについて解説する予定です。

 

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手術内容:眼瞼下垂症手術(筋膜移植術)

早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、角膜潰瘍、角膜びらんなど

見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、まぶたの開きの低矯正、

筋膜拘縮による過開瞼、まぶたのアーチの不整、二重の左右差、二重のくいこみ、

キズアト、二重の消失、二重が浅くなる、まつ毛の内反など

機能面でのリスク:眼瞼おくれ、兎眼、ドライアイ、筋膜拘縮による角膜びらん、角膜潰瘍、など

料金:この治療はいまのところ、保険適応でのみ行っています。

3割負担で片側6万円弱、両側で12万円弱です。