王子のまぶたブログ 眼瞼下垂と二重と逆さまつげと

形成外科専門医の王子富登のブログです。二重まぶたと眼瞼下垂と逆さまつげなどの治療について紹介していきます。

逆さまつげ手術の私のこだわり

オジスキンクリニックの王子です。

浦和に来てから早5年たちました。

その間に逆さまつげ手術もかなりの数を担当させていただきました。

 

逆さまつげ手術において、

 

できること。できないこと。

 

わかったこと。わからないこと。

 

起こり得ること。避けられること。

 

コントロールできること。できないこと。

 

色々な知識と経験がさらに深まりました。

その中でこだわり続けていることを書いていきたいと思います。

 

私のこだわりのうち、特に声を大にして言いたいことは、

 

①傷跡を見えないくらい綺麗にすること

涙袋を減らさないこと

 

の2つです。

手術をする上で当たり前だと思われるかもしれませんが、

これを当たり前にこだわって、

当たり前に実現し続けている医師は少ないです。

それは間違いない事実です。

逆さまつげ手術の修正のご相談のかたを数多く見ていますので。

そしてそのかたたちにとって修正手術が必要になるのはとても残念なことですが、

保険治療で行われる逆さまつげ手術のレベルの低さはやむを得ないことです。

それくらい軽視されている手術でもあるので。

(利益目的で逆さまつげ手術に保険適応だからといって目頭切開を加えるようなクリニックは最低ですが。)

整容面どちらが優れているとかはないです。

 

ただ、ひとつ、

許せないことがあるとするならば

 

「整容面(見た目)も機能面も綺麗に治します」

 

といいつつ、

整容面(見た目)の不具合が出て、患者さんから不満を言われると、

 

「保険治療なので逆さまつげが治っていれば機能的に問題ないでしょう!」

 

と逆ギレムーブをかまして逃げる。

 

本当に医師ですか?

 

最低です。

 

しかし、そんな悲しいやりとりが各地で多発しています。

聞くだけで悲しくなります。

 

そんな悲しい気持ちにならないためにも、病院選びは慎重にしてください。

しかしながら慎重に病院選びしたつもりでも

逆に悲しい結果になるということもあるのが難しいところではあります。

Google検索に強い病院、つまりSEO対策している病院は商業的な側面が強く、

技術が高いこととイコールではないことに注意が必要です。

勇気を出して病院を受診してみるのはとても良いことですが、

Google検索で上位にでており、なおかつそれっぽいことがホームページにたくさん書いてあっても、

必ずひと呼吸おいてください。

自分のお顔を任せるのであれば、しっかりと吟味する必要があります。

 

どうすればいいか?

 

単純です。

 

逆さまつげの手術症例の術後3ヵ月以降の写真を数例みせてもらうことです。

 

「逆さまつげの症例写真をいくつか見せてもらえますか?」

 

と勇気をだして聞いてみましょう。

しっかりと症例写真を見せてもらえて、見た目も綺麗であれば迷わず手術を受けていいと思います。

なんらかの理由をつけて写真を見せてもらえなければ、確実に帰ったほうがいいです。

見せてもらえたとしても、顕微鏡の写真だけだと全く参考になりませんので、それも帰ったほうがいい案件です。

 

自分のまぶたを守ってあげてください。

 

ついつい余談がすぎてしまいましたが、

逆さまつげ手術の私のこだわりについて文字で解説していきましょう。

 

①傷跡を見えないくらい綺麗にすること

誰もが望むことです。医師にとっても患者さんにとっても理想な結果です。

誰がやっても傷が綺麗になるわけではありませんが、

ポイントをおさえることで傷を見えないくらい綺麗にすることが現実に近くなります。

重要ポイントはこちら。

 

  • 二重まぶたにしない
  • 傷付近の血流をなるべく保つ
  • 傷を溶けない糸で縫って、抜糸をする
  • 傷を切る位置
  • 傷の縫いかた

 

それぞれ一言二言解説。

 

・二重まぶたにしない

当たり前なのですが、下まぶたが二重まぶたになると変です。

そのためには傷を食い込ませないことです。

傷を食い込ませないと逆さまつげが再発するというのは、

考えもやり方も間違っているといいますか、古いです。

 

・傷付近の血流をなるべく保つ

皮膚や皮下組織を丁寧にやさしく扱い、皮膚の血流に大きく関与する眼輪筋(がんりんきん)をできるだけ温存する。

至極、形成外科的な発想で、他の診療科にはあまりない感覚です。

傷の付近の血流がよいことで傷の治りがよくなり、キズが綺麗に治ってきます。

ひいては睫毛の減少具合も最低限に抑えることにつながってきます。

 

・傷を溶けない糸で縫って、抜糸をする

溶ける糸で塗って抜糸をしない流派がありますが、それはご法度です。

糸の跡が残りやすいのと、二重まぶたの食い込みも残りやすいです。

傷を治すプロの形成外科ではありえない発想です。

 

・傷を切る位置

これが地味に重要です。

逆さまつげ手術でも下瞼のたるみとり手術(表ハムラ)でも切る位置が悪いと、

不自然な見た目になる上に、修正手術もやりにくくなってきます。

私はいままでの経験と研究から、

「この位置から〇mmのところを切ると綺麗に治りやすい」

ということを把握しているので自信をもってデザインしています。

 

・傷の縫いかた

細い糸で丁寧に縫う。糸をきつく締めないでやんわりと傷を合わせる。

そしてまぶたがもとにあったところに戻してあげるようなつもりで縫い合わせていく。

これも形成外科ならではの感覚ですが、大切なことです。

 

 

ひとつひとつを本気で解説すれば膨大な量になってしまいますが、

要点を伝えるとこのような感じです。

 

でも。

 

とっても大きな問題があります。

 

上記の要点が、教科書の逆さまつげ手術のページにひとつも載っていないことなんです。

むしろ逆なことが書いてあったり。

 

教科書を見て手術を覚えるのが普通なので、

間違ったことが書いてあればそりゃうまくいきっこないんです。

教科書に書いてあることをだれも疑わないんですから。

 

続いて、私のこだわりの2つ目。

 

涙袋を減らさないこと

 

下まぶたにおける自然さとは、組織のなめらかな連続性と組織のリッチさだと考えています。

言い換えれば、組織のなめらかな連続性がない状態や、なだらかな隆起などがなく、組織が平坦気味になっている状態が不自然ということです。

 

もちろん意味不明ですよね。

どういうことかというと、

組織のなめらかな連続性がない状態というのは、

分厚い皮膚が急に薄い皮膚につながったり、分厚い皮膚が睫毛にくっついていたり、

切開線が二重瞼のようになって滑らかな皮膚の連続性がなくなっていたりすることです。

皮膚を乱暴に切除したり、皮膚をむやみやたらに食い込ませたりするとこうなります。

 

なだらかな隆起などがなく、組織が平坦気味になっている状態というのは、

涙袋が消失したり、減少している状態です。

もとから涙袋が小さい方はいらっしゃいますが、涙袋の部分の眼輪筋が全くない人はいません。

しかし、この部分の眼輪筋が手術によって切除されてしまうと、

涙袋が減り、組織のリッチさに欠けて不自然に見えてきます。

 

私はこの部分の眼輪筋を切除しません。

 

眼輪筋の切除は逆さまつげ手術の本質ではないのと、

涙袋と自然さと保つために眼輪筋が必須だからです。

実際に私がやっている眼輪筋を切除しない術式でも、

後戻りが強くなるとかはありません。

涙袋は減りません。

むしろ涙袋が増えたり、くっきりすることもあります。

 

これこそが私のこだわりなんです。

 

涙袋が減らないように眼輪筋を温存し、

涙袋が少しでもくっきりするような内部縫合を行う。

 

これを愚直に守ることで、自然で美しいまぶたを保つことができると考えています。

 

逆さまつげ手術の術前と術後6か月

術後6か月の微笑み 涙袋がくっきりしている。

 

もちろん逆さまつげが後戻りや再発しないことにも重きを置いています。

これに関してはまたいつか解説しますね。

 

 

今回の記事で私のこだわりが少しでも伝わったでしょうか。

すこし専門的な内容にはなりましたが、参考になれば幸いです。