形成外科専門医の王子です。
眼瞼下垂をなおそうと眼瞼下垂手術をしている眼科を受診し、
少しでも見た目の希望を言ったら、
「うちでは見た目を考慮した手術はできません。美容外科にいってください。」
と言われるケースをちらほら見かけます。
「保険適応の眼瞼下垂手術は、目さえ開けば成功。」
というのはある意味では正しく、ある意味では間違っています。
保険適応の手術は病気を治すためにあるという観点からすると正しいです。
しかし、まぶたの役割は、視界の確保や眼球の保護といった機能面での役割以外にも、
表情やお顔立ちといった整容面での役割もあるという観点からすると間違っています。
私の意見は後者です。
見た目を考慮しない眼瞼下垂手術は眼瞼下垂手術ではありません。
見た目を考慮しない眼瞼下垂手術を受けたかたが修正希望でいらっしゃることが
多々ある他、
ホームページに大々的に眼瞼下垂手術たくさんやってますと広告しているクリニックや、検索エンジンの広告で出てくるクリニックで手術を受けて後悔しているかたが多いです。
操作された情報が過多なこの時代、なにを基準にクリニックを選べばいいのかむずかしすぎます。
そういった意味では、冒頭のコメント、
「うちでは見た目を考慮した手術はできません。美容外科にいってください。」
というのは正しいのかもしれませんね。
患者さんのことを思えば、自分が苦手なことを得意な人にお願いするのは大事なことです。
とはいえどもこんな流れで眼科で手術を断られて、
美容外科で眼瞼下垂手術を受けて悲惨な目にあった人もちらほらいらっしゃいるので
なんともいえないところですが。
本日はオーソドックスな眼瞼下垂手術の症例紹介です。
見た目も大切にする眼瞼下垂手術
視野のせまさ、頭痛肩こり、まぶたのたるみを主訴にいらした患者さんです。
思いっきりまぶたを開いてもこのくらいしか開かなければ眼瞼下垂症です。
このかたのまぶたの状態をみて思うことはたくさんあるのですが、
主に気をつけるところはこんな感じです。
すべて見た目とデザインに関することです。
このなかでも特に大事なのは、目頭側のデザインです。
たるみをとりたいからといってラインを高くすると、
ひだを超えるような線がでてきてしまいます。
似合うかたはそれで全く問題ないのですが、もうこひだが強いかたは似合いません。
そしてこれはあとあと治すのが難しいのでなんとかして避けたいところです。
患者さんのリクエストは、
「自然な末広型にしたい。」
ということでした。
このくらいであればもちろんリクエスト聞きますよ。
今回のデザインです。
すべて細かく記録しておきます。
挙筋腱膜を固定しました。
左右同じ位置で固定します。この写真も大事。
手術直後。三重リスクがあるのでふくろとじ縫いしてます。
しかしよくみてください。向かって右のほうが目の開きが悪いです。
同じ部分に同じ量の麻酔を打って、丁寧に操作を行っても、
手術終了時にこのような左右差がでることがあります。
でも焦りません。
術前に大きな左右差がなく、手術の際の挙筋腱膜の固定位置も左右対称、
そして挙筋腱膜を調整した段階では左右差がなかったのであれば、
自信を持ってこのまま経過観察するのです。
この時点でいろいろいじるとハマります。
経験が少ないと判断をしくじります。
抜糸時、術後7日目です。
手術直後にはひらきが悪かった、向かって左のまぶたもあがりました。
ほっと一安心です。
この時点でもし左右差があった場合は、手術記録や術中写真を見直して、
調整する余地がありそうであれば、すぐに再調整します。
ためらいは不要です。この時点での修正は容易ですので。
手術直後の開きの悪さを見て焦って、向かって左のまぶたの挙筋腱膜をさらにあげるように調整していたとしたら、、、
この時点でびっくり目になっているところでした。
そんな感じでびっくり目で悩むかたが続々とうまれていくのでしょう。
術後1か月。
おおまかな腫れは引いてくる時期ですが、ほどほどに腫れている時期です。
優しい目の開きで良い経過です。
左右差は全くなくなりました。
術後3か月。ほとんど腫れはひいていますが、朝などはまつげの近くに浮腫みが少し残る時期です。
とてもよい経過で、喜んでいただけました。
手術前の写真と個人的なコメントは、こんな風です。
目頭側のラインも希望通りですし、外側のたるみも自然な感じです。
半年から一年たてば浮腫みもなくなります。
このままでも十分綺麗なんですが、さらに若返りを狙うのであれば
眉下切開がおすすめです。
末広型のまま、二重幅を広げて爽やかな二重にできます。
写真使用のご快諾ありがとうございました。
眼瞼下垂修正手術を依頼されるのはとても喜ばしいことですが、
初回手術が一番やりやすいです。
家が近いとか、ホームページが綺麗とかよりも、
経験豊富でセンスがいいところで手術を受けましょう
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手術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術)
早期のリスク:腫れ、痛み、内出血、感染、稀に結膜浮腫
見た目のリスク:まぶたの開きの左右差、二重の左右差、まぶたのアーチの不整、
予定外重瞼(三重)、二重のくいこみ、キズアト(場合により2本)、
二重の消失、二重が浅くなる、眉毛がさがる、うわまぶたが厚ぼったく見える、など
機能面でのリスク:兎眼、ツッパリ感、視力の変化、眼瞼痙攣、ドライアイ、角膜炎、霰粒腫など
料金:保険適応で約45000円(3割負担)
自費治療で約60万円(税別)